過去の活動

JAXA 宇宙研の見学会

低温・超電導工業会便り No.1 (令和元年8月5日)

              低温・超電導工業会

 

再使用ロケットの開発とはやぶさ2号の活躍を見る

 

2019年度第1回(公開)見学会を201971113:3016:30国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所相模原キャンパスに於いて開催した。

我が国に於ける宇宙開発は、低温、超電導関係者が大いに関心のある科学技術である。今回の見学会では、その最先端である、はやぶさ2号、RV-X再使用ロケットに関して、開発担当研究者の方々によるご講演を聴く機会を得ることができた。低温技術の基礎研究進歩や宇宙探査プロジェックトに想いをめぐらせる場となり、参加した若手や中堅技術者、営業担当者にとって有意義な見学会となった。

なお、当日は、はやぶさ2号が小惑星「リュウグウ」に着陸するタイミングと重なり、研究所には各メディアが集まって、興奮につつまれた状況であった。我々も世紀の瞬間に遭遇する幸運を享受するこができ、見学会はより一層有意義なものとなった。以下にプログラムを示し、見学会の内容を写真を交えて説明する。

プログラム

開会挨拶          上岡専務理事 

1.RV-X再使用ロケット艤装作業見学 

              八木下開発員 2.宇宙科学探査交流棟   小林准教授 

3.再使用ロケットの開発試験の現状

              野中准教授 

閉会挨拶        企画担当 青木理事

 

RV-X再使用ロケット艤装作業見学

 八木下開発員の案内で再使用ロケット艤装作業の見学を行った。天井が高く広い作業場では、RV-X再使用ロケットが設置され、間近に寄って詳細な作業状況が見学できた。非常に手間の掛かる作業で、軽量化と確実な性能発揮のための工夫が随所に見られた。思いもよらない実際のロケット組み立ての様子が見られ、参加者は大いに感動し、満足した様子であった。右は、RV-X再使用ロケットの前での見学者全員の写真である。

 RV-Xの概要パネルの写真を同じく右に示した。写真から分かるように、垂直に発射したロケットを帰還途中で反転させ、垂直に着陸させて回収する物である。この反転に有利なように、通常のロケットと異なり、再使用ロケットは若干円錐形に近い形状をしている。

 JAXAでは再使用ロケットを、観測用ロケットとして使用する予定で、気球で観測できる高度50km以上と人工衛星が観測できる高度250km以下の間 の空間を観測するロケットである。

 

宇宙科学探査交流棟見学

 交流棟では、はやぶさ2号の小惑星リュウグウへの着陸の瞬間であり、メディアへの説明会場となったため、一時は内部への入場が制限されていたが、見学予定時刻の頃には入場することができた。まだ記者会見が続いていたが、再使用ロケットRVT-9の実物やはやぶさ2号に関する展示物を見学することができた。右は交流棟内部での写真である。

 

再使用ロケットの開発試験の現状

 野中聡准教授によって、「再使用ロケット開発の現状とこれから」と題した講演があった。

米国のスペースシャトルは、2ヶ月程度の間隔で高頻度に打ち上げができる予定の再使用型ロケットであったが、2度の全損事故により打ち上げ間隔が5ヶ月から1年となってしまった。そのため、1990年代から各国で再使用型宇宙輸送システムの提案がなされた。我が国でもHOPE-X/XAの提案がされたが、現在は再使用観測ロケットに集中して再使用実験機RVTの開発を行っている。重量 : 500kg、エンジンの推力レベル : 2600-8300Nなどで、推進剤としてLH2 123LLOX 45Lを使用する液体燃料ロケットである。飛行時間は17秒で、2/日の飛行を目標としている。再使用ロケットとしての最終目標は、高度100km以上に100kgのペイロードを打ち上げて帰還することである。また打ち上げコストは従来の1/10として、大気物理観測や微少重力科学への使用を予定している。各諸元は、長さ13.5m、太さ2.7m、総重量11.5トン、空重量4.3トン等である。2025年には定常運用できる計画となっている。

 

なお、本見学会の参加者は29名であった。見学会で行ったアンケートによれば、今後ともこのような見学会あるいは講習会、講演会などを営業や現場の技術者を対象として、低温・超電導工業会で開催して欲しいとの希望が多かった。

 

最後に、低温・超電導工業会は昨年12月に発足しましたが、工業会としては、会員数の増大が急務であります。見学会参加の皆様をはじめとして、(公社)低温・超電導学会の学会併設展示会に出展されている全ての企業の当工業会への加入をお願い致します。

       専務理事(会長代行) 上岡泰晴